大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和57年(ネ)532号 判決 1982年6月28日

控訴人 飛田人徳

被控訴人 国

右代表者法務大臣 坂田道太

右指定代理人 石川久

<ほか一名>

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人は、控訴人がその生前において控訴人の意識正常なる時において文書により作成せる控訴人が死に臨み苦しまざる旨の意思表示及び無益な延命措置を拒否する旨の文書による意思表示が控訴人にとって有効であることを確認せよ。」との判決を求め、控訴の理由として別紙のとおり陳述し、被控訴人指定代理人は、主文と同旨の判決を求めた。

控訴人の本訴請求の原因は、原判決別紙添付の「請求の原因」のとおりであるから、これを引用する。

理由

控訴人が控訴の理由として主張するところは、要するに、本訴は、被控訴人たる国において控訴人主張にかかる意思表示が有効であることを確認すべき旨の作為を求める給付の訴として提起されたものであるから、これを確認の訴であると解したうえ不適法とした原判決は違法である、というにある。しかしながら、訴状記載の請求の趣旨は、「被告(被控訴人)は、原告(控訴人)がその生前において原告の意識正常なる時において、文書により作成せる原告が死に臨み苦しまざる旨の意思表示及び無益な延命措置を拒否する旨の文書による意思表示の有効なることを確認する。」との裁判を求める、というものであり、その請求の原因並びに控訴人が原裁判所に提出した準備書面を精査してみても、本訴をもって所論の趣旨における給付の訴とみることはできず、本訴は確認の訴として提起されたものと解さざるをえない。

しかるところ、控訴人が本訴においてその有効なることの確認を求める意思表示なるものは、いずれもそれによって新たな権利又は法律関係を発生させる性質のものとはいえず、したがって、本訴は、具体的な権利義務に関する紛争についてその存否の確認を求めるものではないことが明らかであるから、請求適格を欠く訴として不適法であるといわざるをえない。そして、本訴の態様に照らせば、右の訴訟要件の欠缺を補正する余地のないことが明らかであるから、本訴は、その余の点につき判断するまでもなく却下を免れない。

してみれば、同旨の判断のもとに民事訴訟法二〇二条を適用して本件訴を却下した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき同法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林信次 裁判官 吉井直昭 河本誠之)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例